病院や介護施設で働いていると、外国人スタッフと一緒に勤務する場面が珍しくなくなってきました。病棟の看護補助者、介護施設の介護職、留学生アルバイト、技能実習生、特定技能のスタッフなど、呼び方も制度もさまざまです。
でも、現場で一緒に働く看護師側が「その人がどんな制度で日本に来ているのか」「どこまで業務を任せてよいのか」「何に配慮すべきなのか」まで知る機会は、あまり多くありません。
この記事では、外国人の看護補助者・介護人材と働く看護師に向けて、特定技能、技能実習、留学生アルバイトなどの違いをシンプルに整理します。制度を知ることは、外国人スタッフを守るだけでなく、看護師自身の業務分担と医療安全を守ることにもつながります。
※制度・統計は2026年6月30日時点で確認しています。実際の受入れ条件や業務範囲は、在留資格、施設種別、雇用契約、院内規定によって変わります。
外国人看護師より、看護補助者・介護人材として出会うことが多い
まず押さえたいのは、外国籍の人が日本で「看護師」として働くには、日本の看護師免許が必要だということです。外国で看護師資格を持っていても、その資格だけで日本の看護師として働けるわけではありません。
そのため、現場で出会いやすいのは、外国人看護師そのものよりも、看護補助者、介護職、介護補助者、留学生アルバイトなどの立場で働く外国人スタッフかもしれません。
外国人スタッフを「人手不足の穴埋め」として見るのではなく、同じ現場で働くチームの一員として理解すること。そのために、制度と業務範囲を知ることから始めます。
医療・福祉分野で働く外国人労働者は、どの国籍が多い?
外国人の看護補助者だけを国籍別に集計した公的統計は確認しにくいです。そこで、ここでは厚生労働省の「外国人雇用状況」から、医療・福祉分野で働く外国人労働者数を見ます。
注意したいのは、この数字は看護補助者だけではないという点です。介護職、看護補助者、福祉施設職員、事務職など、医療・福祉分野で働く外国人労働者が含まれます。
医療・福祉分野の外国人労働者数 国籍別
厚生労働省「外国人雇用状況」令和6年10月末時点。看護補助者だけの人数ではありません。
特定技能・技能実習・留学生アルバイトの違い
外国人スタッフが日本で働く制度にはいくつかの種類があります。看護師がすべての手続きを覚える必要はありませんが、「何のための制度か」「どれくらい働けるか」は知っておくと、現場での見え方が変わります。
| 区分 | 主な目的 | 働き方 | 滞在できる期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号 介護 | 人手不足分野で働くため | 介護分野で就労。技能・日本語の要件がある | 通算で原則5年以内 |
| 技能実習 介護 | 技能移転・人材育成 | 技能実習計画に基づいて働く | 1号1年、2号2年、3号2年で最長5年 |
| 留学生アルバイト | 学業が本来活動 | 資格外活動許可があればアルバイト可能 | 留学の在留期間内。個別指定で4年3月を超えない範囲 |
| EPA介護福祉士候補者 | EPAに基づく受入れ | 介護福祉士国家資格を目指して就労・研修 | 候補者として原則4年 |
特定技能1号 介護
特定技能は、人手不足が課題になっている分野で、一定の技能と日本語能力を持つ外国人が働くための在留資格です。介護分野では、介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語試験などが関係します。
介護職種の第2号技能実習を良好に修了した人、介護福祉士養成施設を修了した人、EPA介護福祉士候補者として在留期間を満了した人などは、介護特定技能評価試験が免除される場合があります。
技能実習 介護
技能実習は、本来は日本で身につけた技能を母国へ移転するための制度です。介護職種では、技能実習計画に基づいて段階的に実習します。
在留期間は、技能実習1号が1年を超えない範囲、2号が2年を超えない範囲、3号が2年を超えない範囲です。制度見直しが進んでいる分野でもあるため、最新情報の確認が必要です。
留学生アルバイト
留学生は、学校で学ぶことが本来の活動です。資格外活動許可を受けることで、1週について28時間以内のアルバイトが認められる場合があります。
病院や施設で補助業務をしている留学生がいても、学業を妨げるような働き方を前提にしてはいけません。現場側も、本人が「学生」であることを忘れない視点が必要です。
外国人スタッフが医療・介護現場で働く流れ
制度を大きく分けると、次のような流れで理解できます。大切なのは、同じ外国人スタッフでも、入国・滞在・就労の根拠が違うということです。
技能・日本語の要件を満たし、介護分野で就労。通算で原則5年以内。
技能移転が目的。段階を進めると最長5年。良好修了後に特定技能へ進む場合もある。
資格外活動許可の範囲で働く。原則週28時間以内で、学業を妨げないことが前提。
外国の資格だけで日本の看護師にはなれない。受験資格認定や国家試験が関係する。
現場で一緒に働くとき、看護師ができること
外国人の看護補助者や介護人材と働くとき、言葉の問題だけに注目しすぎると、大切なことを見落とします。日本語がまだ不慣れでも、介護経験や生活支援の力を持っている人はいます。逆に、日本語が上手でも、院内独自の略語や暗黙のルールには戸惑うことがあります。
申し送り、ナースコール対応、物品補充、患者さんへの声かけ、食事・移動の介助など、現場には「言葉にしないと伝わらないこと」がたくさんあります。外国人スタッフだけの問題ではなく、新人や異動者にも同じことが言えます。
だからこそ、外国人スタッフと働くことは、現場の業務指示を見直すきっかけにもなります。誰が読んでもわかる手順、聞き返しやすい関係、業務範囲を超えない分担は、チーム全体を助けます。
まとめ。制度を知ることが、同じチームで働く第一歩
外国人の看護補助者や介護人材は、人手不足を埋めるための道具ではありません。同じ現場で働くチームの一員です。
ただし、外国人スタッフがどの制度で働いているかによって、働ける時間、業務の位置づけ、滞在できる期間は変わります。特定技能、技能実習、留学生アルバイトを同じものとして扱うと、本人にも現場にも無理が出ます。
看護師が制度を知ることは、外国人スタッフへの配慮だけでなく、業務範囲を守り、医療安全を守ることにもつながります。まずは「どこの国の人か」よりも、「どんな立場で、何を担っている人なのか」を見ることから始めたいですね。
厚生労働省、出入国在留管理庁の公式情報をもとに、外国人雇用状況、特定技能、技能実習、留学、資格外活動許可に関する情報を確認しました。