Smart Nurse Lab

専門卒看護師が学士を取るメリットは?学費・給与差・キャリアで考える

大学編入や学士取得を考える前に、給与差、学費、転職、海外キャリアへのつながりを分けて整理します。

大学校舎の前で学士取得について考える看護師

専門学校を卒業して看護師になった人の中には、「大学へ編入して学士を取った方がいいのかな」「大卒看護師との給料差はどのくらいあるのかな」と考える人がいます。

結論から言うと、学士取得はメリットがあります。ただし、給与だけで見ると、すぐに大きく収入が増えるとは限りません。新卒採用では大卒区分の初任給が高めに設定されている職場がありますが、すでに働いている看護師が後から学士を取った場合、今の勤務先で自動的に給与区分が変わるとは限らないからです。

この記事の前提

この記事では「専門卒より大卒の方が上」という話はしません。給与差は能力差ではなく、主に教育年限や給与規程上の初任給区分として整理します。

なぜ大卒看護師の初任給が高いことがあるのか

看護師の初任給は、病院や法人の給与規程で決まります。多くの職場では、職種、経験年数、夜勤の有無、地域手当、住宅手当などに加えて、最終学歴や教育年限によって初任給区分が分かれています。

そのため、大卒看護師の初任給が高い職場があるのは、「大卒だから看護が上手い」という意味ではなく、4年制大学卒、3年課程卒、2年課程卒などの区分に給与表が分かれているためです。実際の看護実践力は、学歴だけでなく、配属先、経験、学び続ける姿勢、チームでの働き方によって育っていきます。

専門卒との給与差はいくら?公開情報では月数千円の差が多い

Smart Nurse Labで、公開されている新卒看護師の給与情報から、大学卒と3年課程卒・専門卒相当の初任給を比較しました。確認できた16施設のサンプルでは、月額差は2,500円〜16,250円、平均は約6,900円でした。記事上では個別施設の比較やランキングに見えないよう、施設名は出さずに施設タイプ別の目安として整理しています。

つまり、初任給だけを見ると「月5,000〜8,000円前後の差」がひとつの目安になります。ただし、これは公開情報をもとにしたサンプルであり、全国平均ではありません。基本給だけを示す施設、夜勤手当などを含めた合計額を示す施設が混在するため、厳密な比較ではなく、給与表を見る時の感覚値として使ってください。特定施設の待遇を評価する意図はありません。

公開給与情報のサンプル比較
施設タイプ 大卒 3年課程・専門卒相当 月額差
大学病院系A34万円台34万円台約5,600円
国立病院機構系B22万円台21万円台約7,000円
大学病院系C29万円台29万円台約8,800円
自治体系D30万円台30万円台約4,100円
済生会系E30万円台29万円台約4,400円
民間総合病院系F31万円台31万円台約3,100円
国立病院機構系G22万円台21万円台約7,800円
厚生連系H25万円台24万円台約16,300円
自治体系I30万円台30万円台約3,100円
国立病院機構系J28万円台27万円台約8,400円
地域医療支援病院系K28万円台28万円台約7,700円
民間総合病院系L29万円台28万円台約12,000円
比較する時の注意

「基本給」なのか「夜勤手当などを含む合計」なのかで見え方は変わります。求人票では、大卒と専門卒の差だけでなく、夜勤手当、賞与の算定基礎、地域手当、住宅手当、昇給幅も一緒に確認しましょう。

在職中に学士を取る前に、誰に確認すればいい?

ここがとても大切です。新卒採用時に大卒区分がある職場でも、在職中に学士を取った人の給与が自動的に上がるとは限りません。大学編入に申し込む前に、今の職場で「学士取得が給与や昇格にどう反映されるか」を確認しておきましょう。

直属の師長進学による勤務調整、夜勤回数、休み方、部署内での相談ルートを確認する
看護部・看護管理室キャリア支援、教育制度、院内評価、昇格要件、実習指導や教育担当へのつながりを確認する
人事・総務・給与担当給与規程、学歴区分、資格手当、昇給、賞与、退職金への反映を確認する
労務・就業規則の担当窓口勤務時間、休職、時短、学費補助、奨学金、兼業規程などを確認する

聞き方はシンプルで大丈夫です。「在職中に看護学士を取得した場合、給与区分や昇格要件に反映されますか」「反映される場合、いつ、どの書類を、どこへ提出しますか」と確認します。口頭だけで終わらせず、給与規程や就業規則の該当箇所、申請書類の有無まで見ておくと安心です。

大学編入・学士取得にかかる学費

学士取得にかかる費用は、通学制の大学に編入するのか、通信制大学を使うのか、放送大学や大学改革支援・学位授与機構の制度を組み合わせるのかで変わります。授業料だけでなく、入学金、教材費、実習費、スクーリングの交通費、宿泊費、証明書費用も見ておきたいところです。

学士取得で見たい費用
費用 見るポイント
入学金・授業料大学、通信制、科目履修、単位数で大きく変わる
教材費・実習費教科書、実習、演習、システム利用料などを確認する
交通費・宿泊費スクーリングや試験会場が遠い場合は負担が増える
機会費用夜勤を減らす、勤務日数を減らす、副業時間が減る場合の収入減

収入面で考えるなら、学費だけでなく「学ぶために減らした収入」も含めて計算します。たとえば授業料が80万円でも、勤務調整で年間20万円の収入減が2年続けば、実質的な負担は120万円になります。

学費回収シミュレーター

下のシミュレーターでは、学士取得にかかった総費用と、学士取得後に増える見込みの収入から、何年くらいで費用を回収できるかをざっくり計算できます。金額はすべて額面ベースの目安です。

回収の目安 約11.9年

年間の収入増は84,000円です。

計算式:総費用 ÷(月給アップ×12+賞与反映−年間収入減)。税金、社会保険料、退職金、昇格時期、奨学金、勤務条件は含みません。

給与だけで回収できないケースもある

学士取得後も給与が変わらない場合、給与差だけでは学費を回収できません。その場合は、大学院進学、教育職、海外、転職先の選択肢など、将来のキャリア価値として考える必要があります。

転職・大学院・教育職で選択肢が広がる

学士取得のメリットは、目の前の月給差だけではありません。転職で応募先を選ぶ時、大学院に進む時、看護教育や研究に関わる時、学士があることで説明しやすくなる場面があります。

特に、大学病院、看護学校や大学の教育領域、研究補助、企業の医療系職種、国際的な活動などを考える人にとって、学士はキャリアの土台になります。すぐに年収が上がるというより、「次の選択肢に進みやすくなる」と捉える方が現実的です。

海外で働きたい人にとって、看護学士は重要になる

将来、海外で看護師として働くことを考えるなら、看護学士は大きな意味を持ちます。国や州によって登録要件は異なりますが、海外資格看護師の審査では、どのレベルの看護教育を受けたか、学位として説明できるかが重要になることがあります。

たとえば英国、オーストラリア、カナダなどでは、海外で教育を受けた看護師向けに資格審査や登録プロセスがあります。必要な学位、実習時間、英語力、試験、ビザ要件は国ごとに違うため、「看護学士があれば必ず働ける」とは言えません。それでも、海外就労や海外進学を視野に入れるなら、看護学士は自分の教育歴を説明するうえで強い材料になります。

学士取得が向いている人、急がなくてもよい人

学士取得を考える判断軸
タイプ 考え方
大学院、教育職、研究、海外を考えている学士取得の優先度は高め。早めに条件を確認したい
転職先の選択肢を広げたい応募条件や評価制度によってはメリットがある
今すぐ年収を上げたい転職、夜勤手当、働き方変更の方が早い場合もある
目的がまだ曖昧まず学費、勤務調整、給与反映の有無を確認してからでよい

まとめ

専門卒看護師が学士を取るメリットは、給与差だけでは測れません。公開給与情報のサンプルでは、大卒と3年課程・専門卒相当の初任給差は月数千円程度の施設が多く、学費を給与差だけで回収するには時間がかかることがあります。

一方で、学士は転職、大学院、教育職、研究、海外キャリアを考える時に、自分の選択肢を広げる土台になります。進学前には、師長、看護部、人事・総務、給与担当に、在職中の学士取得が給与や昇格に反映されるかを確認しましょう。

この記事の給与比較とシミュレーションは、公開情報と簡易計算にもとづく目安です。給与規程、学費、海外登録要件は年度や施設、国・州によって変わるため、進学や転職の判断前に必ず公式情報を確認してください。

参考情報

参考情報は2026年7月7日時点で確認しています。給与、学費、海外登録要件は変更される場合があるため、利用時は公式サイトで最新情報を確認してください。